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オトナリ GREEN SESSION

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 古来、善光寺平から飯綱山、戸隠山に至る山岳地帯は多くの修験者や参詣者が集まる同時参詣の回廊。中間地点にある飯綱高原は古くから修験道開祖の地といわれる山岳信仰の聖地でした。
 大座法師池はそんな飯綱高原の中央に位置するカラマツ林をたずさえた標高1,030メートルの湖。すり鉢状に囲まれた山々から下りる空気の響きが集まる、今でも神秘性を失わない美しい湖です。

 この大座法師池を舞台にした今回のイベントは飯綱高原イヤー実行委員会の主催。長野市の観光キャンペーンとして通年で行なわれるさまざまな行事の一環として発案されたものです。
 一番最初にあったテーマが「エコロジー」。このあたりの湿地帯はいわば麓に広がる善光寺平の水源地のひとつ。大座法師池をはじめ飯綱高原に点在する湖沼から入り込んだ山ひだを伝って、幾筋もの沢が麓の渓谷を流れる裾花川に注ぎ込み、疎水となって善光寺平を潤してきたのです。
 どこも同じですが、山が美しいと水は清らかです。日本列島は山岳が多く、山には豊かな森林が広がっています。日本の水がおいしいのはこの地形的な幸運と気候的な幸運に拠るところが大きいのです。日本の人々は、もっと山や森林について意識的になった方が良いと思います。おいしいお酒を飲むためには山の環境を整えなければいけません。

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GREEN LAB のテント、ソーラークッカー、グリーン・トークセッション

 グリーンプログラムと名づけた部分、いわゆるエコロジカルな活動をしている人たちに参加していただく部分なのですが、今回このグリーンプログラムの基軸を須坂市のGREEN LAB に担っていただきました。
 GREEN LAB は、もともとスノーボーダーのチームです。雪山で遊ぶことから山の環境を考え、単に「山をきれいに、地球を大切に」ということではなく、現代社会が組み込まれてしまっている反人間的、反地球的な構造からの離脱を目途した産業の創設を視野に入れて活動しているのです。
 具体的には、長野県で採れるカラマツなどの間伐材を利用したスノーボードや木製遊具の企画開発、製造をしながら、夏は農業に携わり冬は雪山を滑走する、森林を中心に農山村で豊かに、地球を磨り減らすようにではなくて、持続的に自然との共生をしながら暮らして行くためのライフスタイルを提案しています。

 グリーンプログラムは、このGREEN LAB を軸に、森や林、山のことや農業に関して適切と思える取組みをしている人たちに集まっていただきました。

 ごくう会は上田市のグループ。地球環境を保全しながら永続性のある活性土壌を作るための技術を確立しています。「いきいきみどりちゃん」というバクテリアを使い、その土壌とそこに生息する動植物や微生物のことを考えながら、その土地に合った活性土壌の作り方を試行し、元気な土からおいしい野菜を産み出し、それを適正な方法や価格で販売するまでを構築します。それらのプロセスを旧来の市場経済や統制農業のような効率重視の画一的な仕組みではなく、その土地や地域に備わっているものを使って組上げようというコンセプトなのです。あ、有機燃料も作れます。

 NICEは、環境、農業、福祉、教育、文化などさまざまな分野でワークキャンプなどのボランティア活動を行うNGOです。長野県内でも清内路村などで継続的にワークキャンプを行なっていて、村の中と外を面白く豊かに繋げる活動をしています。
 みどりの市民、市民の森づくり、CLUBSUNDAY、マイ農家クラブ、いろいろな団体が持続可能な循環型の仕組みを、この地球環境の中にセットしようと努力しています。

 戦後、経済効率を一義的に追求し、森林を放置し、農地を切り捨て、化学肥料や農薬で土壌を汚し、ゴリ押しの大量生産大量消費を長い間続けて崩壊させてしまった日本の基調文化としての農業や林業を、こういうひとつひとつの取組みによって甦らせることができるかもしれないと思います。

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テントギャラリー

 テントギャラリーは、数年前に勝山ゆかこさんから聞いた話が元になっています。勝山さんは人間の裸の感覚から絶対に離れない表現を、それこそのたうちまわるようにして続けて来ているアーティストです。絶対美術(という呼び方があるかどうかわかりませんが……)から早い時期に離れ、汎用的な美術の概念ではない作品が増えていった頃、取組んでいたのがテントギャラリー。「散歩してたら突然……」普通の風景の延長線上にアートを置きたい、という発想で始まった勝山さんのテントギャラリーの話でした。
 大座法師池周辺に広がるカラマツ林を見た時、その話を思い出したのです。この林の間に地球や時間や自然な人間の姿を感じさせる興味深いアートが点在したらさぞかし……。

 アートとエコロジーの関係は密接です。あるいは、同じような役割を持ったものでもあります。環境エンジニアにアートディレクションを習得した人が多いのもその表れだと思います。両方とも人々の生活を豊かにする技術です。両方とも自分の手で作ることを基本に置きます。両方ともお金を追い求めるものではありません。両方とも精神性や誇りを大切にします。両方ともクリエイティヴです。現代社会が直面している閉塞状態から抜け出すために、このふたつの分野は両輪といえるくらいに重要な要素なのではないかと思ったりしています。

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 今回は「オトナリ飯綱高原」のキャンペーンの一環として行なわれた「GREEN SESSION」でしたが、これは今後継続的に行なわれるべきアイディアではないかとも思っています。
 長野県という豊富な森林資源と高い山に囲まれた地域、水がきれいな冷涼な地域、おいしい農産物が他の地域よりもたくさん生産できる地域では、地球を磨り減らすようにして生きて行くのではなく、地球と一緒に、自然の中で、人間の気持ちを理由にした生活スタイルや産業を構築して行ける可能性は高いはずです。日本という国の状況や行政、政治も大きく影響することかもしれませんが、少なくとも、市民レベルでの認識は高める必要があって、自分のことは自分で、自分の手でいろいろなものごとを創造して行く姿勢を持つことは必ず問われることだと思います。

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【Ngene掲載:2008年8月16日】

映画「龍宮」完成

 長野県の最南端にある山あいの村、天龍村と遠山郷で撮影された映画「龍宮」が完成しました。
 南アルプス、赤石山系の深い山襞を、遠州・静岡県西部から諏訪湖の畔まで、山脈に沿って縦走する、秋葉街道と遠州街道が交錯する谷間の村々。美しい自然と素朴な暮らしを背景に、質感の高い魅力的な作品に仕上がっています。

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 監督の太田信吾さんは、現在大学4年生。「天龍村アートプロジェクト」という興味深い活動を、4年間続けて来ました。毎年夏休みに、複数の大学からアート分野の大学生を募って、天龍村へ滞在し、農作業を手伝いながら、一ヶ月間アートの制作を行なう、というプロジェクトです。この発想自体とても有意義で面白く、地に足の着いた自然なクリエイティビティーを感じます。

 先月、11月18日に、現地・天龍村で完成直前の試写会が行なわれました。
 まだ整音も済んでいないラフ編集大詰め段階の作品を持って、天龍村を再訪したのは、太田さん、助監督の川津さん、助演俳優の安西さん。
 会場の文化センターに到着すると、遊んでいた子供達が早速3人を取り囲み、「ひさしぶりだなぁ!」口々に話しかけます。「なぁなぁ、今あの人とつきあっとるんだら?」なんていうオマセな質問も、なんとも打ち解けた雰囲気。

 映画「龍宮」は、天龍村で長期滞在を重ねる中から着想を得た物語(フィクション)ということです。愛情、悲しさ、残虐性や優しさ、山間の村の純粋な美しさと閉塞性、すれ違いを生む人間の業の物語です。けして天龍村をプロモートする作品として制作されたわけではないのですが、映画は全編、天龍村や南信濃の壮大で明媚な自然を背景に、実在する村の中で撮影され、その場所に宿る歴史や文化、神秘性に触れながら、美しい物語となって進んで行きます。

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 山村の古家で、寄り添うように生きる、面彫職人の父と娘の物語。

 父の彫る面は、村を守る神社に毎年奉納される逸品でありながら、おそらく失語症のうえ極めて不器用なために、村から孤立している。娘も、やはり、村の人々に馴染めず、学校では陰湿ないじめに遭っている。どこにも行き場所の無いふたりだけの、寡黙で純粋な愛情は、純粋さゆえに理解され難く、周囲からは、奇異の眼で見られている。

 思春期を迎えた娘は変わる。父娘は、幼少期と同じではいられない。それを解釈できないまま、ふたりの間には、深い溝ができてしまう。

 かけがえのない存在を失なった後に残る、深い愛情の予感と、鬱蒼とした深山のように、また始まる変わらない毎日。問題は解決を見ないまま、物語はスクリーンから消えます。
 けれど、観終わったとき、気持ちの中に、明日のための静謐な光が残るのでした。

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 けして、テレビドラマのように、解りやすい起承転結はありません。安直な感情移入は極力排除しながら、物語の多くの部分は、観る人の想像力に委ねられているように思えます。このあたりは、機会があれば、監督の太田さんの話を聞いてみたい点ですが、この作品は、そんな余地、観る人の感受性が自由に動くことのできるスペースを、含んでいると思います。

 受取る側の想像力を信頼して委ねるところに、芸術性は生成されます。その場で消費されて終わる風俗と、普遍性を持って更に新しい想念を生む芸術の違いは、概ねそのあたりにあります。

 おそらく、物語映画としていくつかの改善点はあると思います。しかし、卒業制作として取組んだ、ほぼ自主制作の初回作品を、このクオリティーで作り上げている点は、特筆に値するものです。
 映像作品としての質の高さ、光や色彩、構図といった、ディテイルを作るセンスの良さ、村の子供達や俳優の演技を、生き生きと映像に収める手腕、天龍村に実在する民話を導入部に配し、桃源郷のような幻想的な風景を多用しながら、現代社会の卑近な問題を通底させる手法など、この作品は、単なる習作では終わらない可能性を帯びていると思います。

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 この映画が、来週12月20日に早稲田大学大隈講堂で開催される「第20回早稲田映画まつり」の本選で上映されることになりました。76作品の中から、10本程度がセレクトされた本選です。審査員は、大林宣彦、根岸吉太郎、内田けんじといった、錚々たる顔ぶれです。
 ほかにもいろいろな映画祭に出品される予定。

 楽しみです。

長編劇映画「龍宮」(2007年/88分/DV/color)
出演:宮本大誠、小深山菜美、森みつる、宮川浩明、なるせ華、安西良
監督・脚本・編集:太田信吾(第一回監督作品)
プロデューサー:伊藤愛、太田信吾
製作:天龍村アートプロジェクト

【Ngene掲載:2007年12月12日】 文、写真:宮内俊宏

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プロフィール

宮内俊宏

Author:宮内俊宏
音楽・文化・アートを柱に、社会が、おもしろく、少し幸せになるような、いろいろなことを試みています。

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